▼プラトンが語った王国
アトランティスの物語は、プラトンの対話篇『ティマイオス』と『クリティアス』に登場する。アテナイの政治家ソロンがエジプトの神官から聞いた話として、ソロンの時代より9000年前に、ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)の外にリビアとアジアを合わせたよりも大きな島があったと語られる。
海神ポセイドンの子孫が治めたその王国は、同心円状の運河で囲まれた壮麗な都を持ち、地中海の国々にまで攻め込んだ。しかし古代のアテナイに敗れ、やがて大地震と洪水によって一昼夜のうちに海に沈んだという。
▼伝説は大陸を探し始めた
多くの研究者は、この物語をプラトンが理想の国家について語るために作った寓話と考えている。しかし1882年、アメリカの政治家イグネイシャス・ドネリーが著書『アトランティス──大洪水以前の世界』で、大西洋に実在した大陸こそ世界の文明の源だと唱え、アトランティス探しのブームに火がついた。
20世紀には、霊能者エドガー・ケイシーがアトランティスの記録やバハマ諸島での再浮上を予言したとされ、海底の岩の並びを「アトランティスの道」とみなす人々も現れた。
▼サントリーニの大噴火
1939年、ギリシャの考古学者スピリドン・マリナトスは、エーゲ海のテラ島(サントリーニ島)の大噴火がクレタ島のミノア文明を衰退させたと唱え、これをアトランティス伝説と結びつける見方が広まった。噴火で埋もれたアクロティリの町は、のちにマリナトス自身の手で発掘されている。
ほかにも、スペイン南部、地中海のマルタ島、さらには南極まで、候補地は世界中に挙げられてきた。だが、プラトンの書いた「ヘラクレスの柱の外の大海」に沈んだ大陸の跡は、海底の調査でも見つかっていない。
正体をめぐる諸説
- 壱
プラトンの創作説(有力)
理想国家と傲慢な大国の対比を描くために、プラトンが作り上げた寓話だとする説。
- 弐
テラ島噴火・ミノア文明説
紀元前2千年紀のサントリーニの大噴火と、ミノア文明の衰退の記憶が伝説のもとになったとする説。
- 参
大西洋の沈んだ大陸説
プラトンの記述どおり、大西洋に実在した大陸が沈んだとする説。海底の地質調査からは否定的に見られている。
