▼川の流れをせき止めるもの
モケーレ・ムベンベとは、現地の言葉で「川の流れをせき止めるもの」を意味するといわれる。土地の人々の話では、ゾウほどの大きさの体に長い首と長い尾を持ち、川や沼に棲んで植物を食べるという。その姿は、図鑑で見る竜脚類の恐竜を思わせる。
古い記録としては、1776年にフランスの神父プロワイヤールが著した本に、宣教師たちがこの地方で巨大な動物の足跡を見たという話が載っており、これをモケーレ・ムベンベの最初の報告とみる人もいる。
▼テレ湖をめざした探検隊
1980年と1981年、アメリカの生物学者ロイ・マッカルは、生物学者リチャード・グリーンウェル、コンゴの生物学者マルセラン・アニャーニャらとともに探検隊を組み、湿地帯の奥地へ向かった。1981年の探検ではテレ湖に到達したが、得られたのは住民の証言だけだった。
1983年、アニャーニャはコンゴ人の探検隊を率いて再びテレ湖を訪れ、湖面にモケーレ・ムベンベを約20分間目撃したと報告した。しかし撮影しようとしたカメラはレンズキャップが付いたままだったといい、決定的な映像は残らなかった。
▼密林は秘密を守る
その後も各国の探検隊がテレ湖をめざした。1988年には、のちにノンフィクション作家となる高野秀行らの早稲田大学探検部が湖畔に長期間とどまって観察を続けたが、怪獣の姿をとらえることはできなかった。写真も骨も、確かな証拠はいまだ見つかっていない。
テレ湖の周辺は人が入るのも難しい広大な湿地林で、未知の生き物がいてもおかしくないと考える人もいる。一方で、恐竜が数千万年も生き延びるのは生物学的に考えにくいとする意見が大勢だ。
正体をめぐる諸説
- 壱
動物の誤認説
ゾウやカバ、ワニ、大きなヘビなどを見間違えたり、話が伝わるうちに大きくなったとする見方。
- 弐
竜脚類の生存説
アパトサウルスのような首の長い恐竜の子孫が、環境の安定した密林で生き残っているとする説。化石などの証拠はない。
- 参
精霊・伝承説
モケーレ・ムベンベは実在の動物ではなく、川や森の精霊として語られてきた存在だとする見方。
