▼「紐をもつカムイ」
アッコロカムイは、アイヌ語で「紐(触手)をもつカムイ」という意味とされ、漢字では「大章魚」とも書かれる。噴火湾の主とされ、伝承によっては、足を広げた大きさは畑1町(およそ1ヘクタール)ほどもあるという。
体は全体が赤く、その赤さは空まで照り映えるため、遠くからでも居場所が分かった。人々はその赤い海を避け、鯨や船さえ丸呑みにするこの主に近づかないようにしたと伝えられる。
▼大グモがタコになった話
その生まれについては、いくつかの話が伝わる。よく知られるのは、レブンゲ(現在の豊浦町礼文華)に現れて村を荒らした大グモの化け物ヤウシケプが、海の神レプンカムイに海へ引き入れられ、巨大なタコに変わったという話である。
ほかに、女神が身に着けていた肌帯を海へ投げたところ、それがタコになったという話もある。礼文華の岬では、20間(約40メートル)四方もある大ダコが鯨を丸呑みにするのを見たという話も記録されている。
▼化け物が集まる湾
噴火湾のまわりには、巨大なナマコ「アツゥイカクラ」や、「沖の長老」を意味するレブンエカシなど、ほかにも海の化け物の話が伝わる。こうした伝承は、更科源蔵の『アイヌ伝説集』(1971年)などに書き留められている。
噴火湾という名は、1796年にこの湾を訪れたイギリスの測量船の艦長ブロートンが、周りの火山を見て「ボルケーノ・ベイ」と呼んだことに由来する。火の山に囲まれた湾の底に、赤い主はいまも潜んでいるのだろうか。
正体をめぐる諸説
- 壱
大型のタコの見聞説(有力)
北の海に棲む大型のタコの姿や、その力の強さが、語り継がれるうちに巨大な主の話になったとする見方。
- 弐
赤潮・海の色の説明説
海が赤く染まる現象を、赤い大ダコのしわざとして説明した言い伝えだとする説。
- 参
湾に潜む巨大頭足類説
伝承の大きさに近い未知の巨大なタコが、いまも湾の深みに棲んでいるとするUMA的な見方。
