▼『遠野物語』のザシキワラシ
1910年に刊行された柳田國男の『遠野物語』は、旧家にはザシキワラシという神の住む家が少なくないと記す。多くは12、3歳ほどの童児で、この神が宿る家は富み栄えるという。
同書の第18話では、女の子の姿をした2人のザシキワラシが旧家の山口孫左衛門の家から去っていく。その後まもなく、家の主従20人あまりが茸の毒で一日のうちに亡くなったと語られる。座敷わらしは、福を招くと同時に、去れば家が傾く存在でもあった。
▼緑風荘と亀麿
緑風荘の伝承では、南北朝時代に戦に敗れて金田一へ落ち延びる途中、6歳の亀麿という男の子が病で亡くなった。亀麿は死の床で末代まで家を守ると言い残し、その霊が家の守り神になったという。
座敷わらしが現れるとされるのは「槐(えんじゅ)の間」だ。写真に光の玉が写る、おもちゃがひとりでに動く、廊下で足音がするといった不思議な体験が語られてきた。
▼焼け残った祠と再建
2009年10月4日の夜に起きた火災で、緑風荘の本館は全焼した。焼け跡に残ったのは、座敷わらしを祀る中庭の亀麿神社だけだったという。
宿は2015年10月に再建の工事を始め、2016年5月14日に営業を再開した。亀麿神社の例大祭は毎年9月28日に行われている。
正体をめぐる諸説
- 壱
家の守り神説
座敷わらしは家に宿って繁栄をもたらす神で、去ると家運が傾くとする、東北に伝わる民間信仰そのものの見方。
- 弐
子どもの霊説
幼くして亡くなった子どもの霊が家にとどまり、座敷わらしになったとする説。緑風荘の亀麿の伝承もこの形をとる。
- 参
心理・環境説
古い家のきしみや暗がり、出ると聞いて泊まる人の期待が、足音や気配の体験を生むとする見方。
