▼王の城、そして牢獄
ロンドン塔は1066年のノルマン征服の後、ウィリアム1世が築いた城に始まる。中心の「ホワイト・タワー」は1078年に建設が始まり、1100年ごろまでに完成したとみられる。
城は多くの身分の高い囚人を閉じ込めた場所でもあった。1483年には幼い王エドワード5世と弟リチャードが塔に入ったまま姿を消し、「塔の王子たち」として謎を残している。1988年に世界遺産に登録された。
▼首のない王妃
ヘンリー8世の2番目の王妃アン・ブーリンは、1536年5月19日にロンドン塔で処刑され、城内の聖ペテロ・アド・ヴィンクラ礼拝堂に葬られた。1554年にはジェーン・グレイもタワー・グリーンで処刑されている。
伝承では、アンの幽霊はいまも城内をさまよい、夜の礼拝堂に貴族たちの行列を率いて現れるという。1817年10月には、宝物庫の長官エドマンド・スウィフトが、食事中に妻の頭上に浮かぶ奇妙なものを見たと語り、塔の怪談に加わった。
▼城を守るワタリガラス
ロンドン塔には少なくとも6羽のワタリガラスが飼われ、「カラスがいなくなると王国が滅びる」と言い伝えられている。言い伝えはチャールズ2世の時代にさかのぼるとされる。
しかし塔の歴史家は、この話はヴィクトリア朝に生まれた空想の可能性が高いと見ている。塔にカラスがいる姿を描いた最も古い記録は、1883年の子ども向けの本と新聞だという。
正体をめぐる諸説
- 壱
古城の雰囲気が生んだ伝説説(有力)
処刑や幽閉の歴史をもつ古い城の雰囲気が、見間違いや物語を幽霊譚に育てたとする見方。
- 弐
観光の語りとしての発展説
ヴィクトリア朝以降、訪れる人に語られる中で、幽霊やカラスの伝説がふくらんだとする説。
- 参
無念の魂がとどまる説
非業の死を遂げた人々の魂が、いまも城を離れられずにいるとするオカルト的な解釈。
