▼牧場に散らばった銀色の残骸
1947年の夏、ロズウェルの北およそ30マイル(約50キロ)の牧場で働いていたウィリアム(マック)・ブレイゼルは、草地に奇妙な残骸が散らばっているのを見つけた。ゴムの切れ端、錫箔のような薄い金属、丈夫な紙、細い棒──本人はのちにそう説明している。
折しもアメリカ中で「空飛ぶ円盤」の目撃が話題になっていた時期である。ブレイゼルは保安官に届け、話はロズウェル陸軍航空基地へと伝わった。
▼「円盤回収」から「気象気球」へ
7月8日、基地の広報担当ウォルター・ハウトは、第509爆撃群の隊員が牧場に墜落した「空飛ぶ円盤」を回収したとする報道発表を出した。ところが同じ日のうちに、第8航空軍司令官ロジャー・レイミー准将が、回収物は気象観測用の気球だったと説明し、騒ぎはいったん収まった。
事件が再び脚光を浴びたのは30年以上たった1970年代末である。当時の関係者の証言をもとに「軍は本物の円盤と宇宙人の遺体を隠した」とする本や番組が相次ぎ、ロズウェルは陰謀論の聖地となった。
▼空軍の回答と、消えない疑惑
アメリカ空軍は1994年に報告書を出し、残骸はソ連の核実験を探るための極秘計画「プロジェクト・モーグル」の気球群だったと結論づけた。さらに1997年の報告書では、「宇宙人の遺体」の証言は、後年に行われた高高度落下実験の人形を記憶違いしたものだと説明している。
1995年には「宇宙人解剖フィルム」なる映像が世界中で放映されたが、のちに制作者自身が作り物だったと認めた。それでもロズウェルには国際UFO博物館が建ち、毎年夏のUFOフェスティバルには多くの人が集まる。真相は本当に気球だったのか──疑う声はいまも絶えない。
正体をめぐる諸説
- 壱
モーグル気球説(公式見解)
核実験探知のための極秘の気球群が落ちたもので、機密のため当初は気象気球と説明されたとする空軍の結論。
- 弐
異星人の宇宙船墜落説
本物の宇宙船が墜落し、軍が機体と乗員の遺体を回収して隠したとする説。公的な裏付けは見つかっていない。
- 参
記憶の混同説
数十年後の証言には、別の時期・別の事故の記憶が混ざり、話が膨らんでいったとする見方。
