▼川面から昇る赤い玉
火の玉は、ポンピサイ郡を中心に、メコン川のおよそ250キロメートルにわたる流域で見られるとされる。赤みを帯びた光の玉は、小さな火花ほどからバスケットボールほどの大きさまであり、数百メートルの高さまで昇って消えるという。
現れる数は夜によって大きく違い、数十から数千とも語られる。最も多く見られるのは、雨安居が明けるオークパンサーのころ、旧暦11月の満月の前後である。
▼仏に捧げるナーガの火
地元では、この火の玉はメコン川に棲む蛇神ナーガが、雨安居の明けに仏を迎えて捧げる火だと信じられている。かつては「幽霊の火」と呼ばれていたが、1980年代半ばに地元の議会が「パヤナークの火」と正式に名づけた。
いまでは火の玉を見ようと、毎年この時期に多くの人々が川岸に集まり、祭りとしてにぎわう。2002年には、この火の玉を題材にした映画『15 カム・ドゥアン 11』(英題「メコン・フルムーン・パーティー」)も公開された。
▼正体をめぐる論争
科学的な説明としては、湿地から出るガスが自然に燃えるという説が唱えられてきた。一方、2002年にはタイのテレビ局iTVの番組が、対岸のラオスの兵士たちが空へ曳光弾を撃つ様子を放送し、大きな論争を呼んだ。
これに対して、ラオス側は2021年、新型コロナで行動が制限されていた夜にも、気づかれずに銃を撃つことは極めて考えにくいとした。火の玉の正体は、いまも決着していない。
正体をめぐる諸説
- 壱
曳光弾・花火説
対岸から撃たれた曳光弾や照明弾、打ち上げられた火が火の玉に見えているとする説。
- 弐
湿地のガス説
川底や湿地から出たリン化水素やメタンなどのガスが、自然に燃えて光るとする説。
- 参
ナーガの捧げもの説
メコン川に棲む蛇神ナーガが、仏に捧げるために火を放っているとする地元の信仰。
