超常アトラス
人魚伝説のイメージNo.139
UMAUMA(未確認生物)

人魚伝説

マーメイド/女神アタルガティス

最初の人魚は湖に身を投げた女神だった! 古代シリアから大航海時代まで、海に棲む半人半魚の系譜

上半身は人、下半身は魚――。人魚の姿は世界中の伝承に現れるが、その古い原型の一つが、地中海沿岸の都アシュケロンで崇められた女神アタルガティス(デルケト)である。湖に身を投げて魚の体になったという女神の物語は、のちの人魚像につながっていった。

現場
イスラエル アシュケロン(古代のアスカロン)
初出
紀元前1世紀
怪奇度
★★★★★

▼魚の体になった女神

古代メソポタミアでは、古バビロニア時代から、魚の尾を持つ男の姿(クルッルー)が円筒印章などに守り神として描かれていた。

シリアの女神アタルガティスは、ギリシャ・ローマの著述家にはデルケトの名で知られ、アシュケロンで崇められた。紀元前1世紀のディオドロスが伝える話では、女神は若者と恋をして娘を産んだことを恥じ、アシュケロン近くの湖に身を投げ、頭は人のまま体が魚になったという。捨てられた娘は鳩に育てられ、のちのアッシリアの伝説の女王セミラミスになったとされる。

▼聖なる魚の池

アシュケロンや、北シリアのヒエラポリス・バンビュケ、エデッサにあった女神の神殿には魚の池があり、その魚には神官しか触れることを許されなかった。2世紀のルキアノスは『シリアの女神について』で、ヒエラポリスでの信仰の様子を書き残している。

▼セイレーンから人魚姫へ

ギリシャ神話のセイレーンは、もともと鳥の姿の怪物だったが、中世になると魚の尾を持つ姿で描かれることが増え、人魚と重なっていった。

1493年、クリストファー・コロンブスはカリブ海で人魚を見たと記録したが、これはマナティーだったと考えられている。1837年にはハンス・クリスチャン・アンデルセンが『人魚姫』を書き、人魚は心を持つ悲恋の主人公として描かれるようになった。伝承の外で人魚が実在する確かな証拠は見つかっていない。

正体をめぐる諸説

  • 壱

    海獣の見間違い説(有力)

    マナティーやジュゴンなどの海の哺乳類を、遠くから人の姿と見間違えたとする説。コロンブスの記録もこう説明される。

  • 弐

    女神信仰起源説

    アタルガティスのような魚の姿の神々の信仰が、人魚の姿の源になったとする見方。

  • 参

    未知の海洋生物説

    人に似た未知の生き物が海に実在するとする説。証拠は見つかっていない。