▼密林の人食い獣
マピングアリは、パラー州、アマゾナス州、アクレ州の森に20世紀まで出没すると信じられてきた獣である。名はトゥピ・グアラニ語で「ねじれた、または後ろ向きの足をもつもの」を意味するとされる。
言い伝えでは、全身を赤や茶、黒の長い毛に覆われ、鉤爪と後ろ向きの足をもつ。鼻から腹まで裂けた大きな口や、額か腹にある一つ目で語られることも多い。毛は弾を通さず、へその周りだけが急所だという。1928年に紹介されたゴム採取人の証言では、留守番をしていた仲間がこの獣に食われていたと語られている。
▼ウアトゥマン川の遭遇
古い目撃談の一つとして、1930年にウアトゥマン川流域の密林で道に迷った探検家イノセンシオが、直立して歩く獣に出会い銃で撃ったという話が伝わる。この証言は、のちに未確認動物学者ベルナール・ユーヴェルマンスの聞き取りを受けた。
ユーヴェルマンスは1958年、マピングアリを未知の霊長類と推測した。ブラジルの民俗学者カマラ・カスクードも1962年、モンゴルの「野人」との類似を指摘している。
▼生き残った地上性ナマケモノ?
鳥類学者デヴィッド・C・オレンは1993年の論文で、マピングアリは絶滅した地上性ナマケモノの目撃に基づくのではないかと唱えた。地上性ナマケモノの一部は皮膚の中に骨の板をもち、腹だけが無防備だったとされ、「腹以外は弾が通らない」という言い伝えとよく合う。
オレンは2001年までに50〜80人の先住民やゴム採取人、鉱山労働者から目撃談を聞き、獣を撃ったという猟師7人にも会った。しかし猟師たちは悪臭のため遺骸を残さなかったと語り、実物の証拠はいまも見つかっていない。一つ目の姿については、ヨーロッパの怪物像が植民地時代に混ざったものとオレンは考えた。
正体をめぐる諸説
- 壱
地上性ナマケモノ生存説
絶滅したとされる地上性ナマケモノが少数生き残り、目撃されているとするオレンの説。骨の板をもつ皮膚が「弾を通さない」伝承の元になったとする。
- 弐
未知の大型霊長類説
ビッグフットのような未発見の類人猿だとする、ユーヴェルマンスらの推測。
- 参
民話・伝承説
森の危険を語る民話が、植民地時代のヨーロッパの怪物像と混ざって育ったとする見方。
