超常アトラス
きさらぎ駅のイメージNo.14
都市伝説都市伝説

きさらぎ駅

存在しない駅

深夜の電車が着いたのは、地図にない無人駅だった── ネット掲示板から生まれた異界駅の伝説

2004年1月のある深夜、匿名掲示板に一人の女性が書き込みを始めた。「いつも通勤に使っている電車の様子がおかしい」。彼女が降り立ったのは、どの路線図にも載っていない「きさらぎ駅」だった。

現場
静岡県浜松市 遠州鉄道沿線(舞台とされる地)
初出
2004年
怪奇度
★★★★★

▼実況された異界

2004年1月8日の深夜、インターネット掲示板「2ちゃんねる」のオカルト板に、「はすみ」と名乗る女性の書き込みが現れた。仕事帰りに新浜松駅から私鉄に乗ったが、いつもは止まる駅に止まらず、長い時間走り続けているという。乗客はみな眠っていた。

やがて電車は「きさらぎ駅」という無人駅に着いた。周囲は草原と山ばかりで、人家は見当たらない。書き込みは、掲示板の住人とやり取りしながら、まさに今起きていることとして続けられた。

▼太鼓の音と片足の老人

彼女は線路を歩いて戻ろうとした。途中には「伊佐貫」という、現実には存在しないトンネルがあった。遠くから太鼓や鈴のような音が聞こえ、片足の老人が現れて消えたという。親切そうな男性の車に乗せてもらったものの、車は山の方へ向かっていく。そして「隙を見て逃げようと思っています」という意味の書き込みを最後に、彼女の消息は途絶えた。

▼異界駅ものの始祖

書き込みが新浜松駅に触れていたことから、浜松市を走る遠州鉄道の沿線が舞台ではないかと考えられ、駅の雰囲気が似ているとされるさぎの宮駅を訪ねる人も現れた。もちろん、きさらぎ駅は実在しない。

それでもこの話は、「やみ駅」「かたす駅」といった数多くの「異界駅」の物語を生む源となった。2022年には映画化され、遠州鉄道も記念の企画で応じた。2025年には続編の映画も公開されている。

正体をめぐる諸説

  • 壱

    創作説(通説)

    掲示板の実況形式を使った創作であり、実際の出来事ではないとする見方。

  • 弐

    異界迷い込み説

    電車がこの世と隔てられた異界へ迷い込み、書き込みだけが現世に届いたとする説。

  • 参

    神隠し伝承の現代版説

    人が忽然と消える「神隠し」の昔話が、ネット時代に電車と掲示板の姿で語り直されたとする民俗学的な見方。