▼峠を貫いた古いトンネル
旧犬鳴トンネル(犬鳴隧道)は、1949年11月3日に開通した道とともに使われ始めた峠のトンネルである。1975年に新犬鳴トンネル(全長1,385メートル)が開通すると、旧道は人通りが絶えた。
やがて旧道は不法投棄や暴走族のたまり場となり、旧トンネルとともに閉鎖された。入口はコンクリートのブロックでふさがれ、立ち入ることはできない。1988年には、このトンネルで若い男性が殺害される痛ましい事件も起きている。
▼地図から消えた村
都市伝説では、犬鳴山の奥に外部との接触を一切絶った「犬鳴村」があり、興味本位で訪れた者は村人に襲われるという。村の入口には「この先、日本国憲法は通用せず」という看板が立っている、鎌や斧を持った男に追いかけられる、といった話がまことしやかに語られてきた。
これらは伝説であり、そうした村が存在した事実はない。ただし、峠のふもとにはかつて実在の犬鳴村(犬鳴谷村)があり、現在の宮若市犬鳴の地名に名を残している。
▼ダムの底と映画
峠の近くには犬鳴ダムが造られ、1997年に完成した。2020年には、この都市伝説を題材にした清水崇監督のホラー映画『犬鳴村』が公開され、話題を呼んだ。
正体をめぐる諸説
- 壱
架空の村説(通説)
外界と隔絶した犬鳴村は実在せず、廃道となったトンネルの不気味さから広まった作り話だとする見方。
- 弐
実在の集落混同説
峠のふもとに実在した犬鳴の集落や、ダムの建設で変わった景色が、伝説の素地になったとする説。
- 参
事件の記憶説
1988年の痛ましい事件の記憶が、トンネルを「恐ろしい場所」とする噂を強めたとする見方。
