▼トラックの前に現れた「ゴリラのような」影
最初の目撃は1970年7月とされる。比婆郡西城町の山道を走っていたトラックの運転手が、道を横切る大きな類人猿のような生き物を見たと証言した。その後も周辺の集落で目撃が相次ぎ、新聞やテレビが連日報じる騒ぎとなった。
証言をまとめると、身長はおよそ1.5〜1.6メートル。全身が黒〜焦げ茶の毛に覆われ、顔は逆三角形で、目は鋭く光っていたという。人を襲ったという話はなく、目撃者を一瞥すると静かに山へ消えていった。
▼役場が本気で動いた
問い合わせの電話が殺到し、1971年4月、西城町役場は「類人猿相談係」(通称ヒバゴン課)を新設して目撃情報の受付と対応に当たった。全国から報道陣や探検隊が押し寄せ、ヒバゴンは過疎の町を一躍有名にした。
目撃は数年にわたって続いたが、1974年10月を最後に公的な目撃報告は途絶え、翌1975年3月、町は「ヒバゴン騒動終息宣言」を出した。しかしその後も、近隣の山野町(現・福山市)で「ヤマゴン」、久井町(現・三原市)で「クイゴン」と、よく似た怪物の目撃が報告されている。
▼イザナミの眠る神域
比婆山は、国生みの女神イザナミノミコトが葬られた地のひとつと伝えられる神話の山でもある。神域の深い森に棲む「山の主」がヒバゴンの正体だったのではないか──そう考える者も少なくない。
正体をめぐる諸説
- 壱
ニホンザルの誤認説
群れを離れた大柄なサルや、毛の抜け変わった個体を見間違えたとする説。最も現実的とされる。
- 弐
ペットの逃走説
飼育されていたゴリラやチンパンジーなどが逃げ出したという説。ただし該当する逃走の記録は見つかっていない。
- 参
未知の霊長類説
中国山地の奥深くに、日本固有の未発見の大型霊長類がひっそりと生き延びているとする説。
