▼トルコ生まれの言葉
「ディープステート(深層国家)」という言葉は、1990年代のトルコで、民主主義に反する軍や官僚などの結びつきを指して使われたのが始まりとされる。
アメリカでも、隠れた統治への懸念は古く、1955年には『原子力科学者会報』で「二重国家」が論じられている。2014年には元共和党の議会スタッフ、マイク・ロフグレンが、政府の一部と金融・産業の上層部が結びついた「混成の連合体」としてディープステートを論じる評論を発表した。
▼陰謀論としての広がり
ドナルド・トランプ大統領は1期目(2017〜2021年)に、自分の政策がディープステートに妨げられていると繰り返し主張し、この言葉を広めた。支持者のメディアも、政権に批判的な人々を「ディープステート」と呼んで攻撃した。
2017年4月の世論調査ではアメリカ人の約48%がディープステートの存在を信じ、35%は陰謀論だと答えた。2018年3月の別の調査では、74%がそうした集団が「たぶん」または「確かに」存在すると答えている。
▼研究者の見方
研究者たちは、アメリカの官僚機構は法律と憲法の枠組みのもとで動く、多様で公開された組織であり、陰謀論が描くような一枚岩の影の組織とは根本的に違うと指摘している。
政治学者のジョージ・フリードマンは、公務員制度はそもそも大統領の権力を制限するために法律で作られたものだと述べている。
正体をめぐる諸説
- 壱
官僚制の誤解説(有力)
法律で身分を守られた公務員が政権に従わない場面を、組織的な陰謀と読み替えたものだとする見方。
- 弐
政治的レッテル説
政敵や批判者をひとまとめにして正当性を奪うための言葉として使われているとする見方。
- 参
影の政府説
選挙で選ばれない官僚・情報機関・軍産複合体が国を裏で支配しているとする陰謀論。証拠は示されていない。
