▼帽子で隠した頭の穴
アマゾンカワイルカ(学名イニア・ゲオフレンシス)は、アマゾン川とオリノコ川の水系だけにすむ淡水のイルカで、体が桃色を帯びることで知られる。流域では「ボト」と呼ばれ、さまざまな言い伝えをまとっている。
伝承では、ボトは夜に美しい若い男の姿に化けて川から上がる。ただし頭の上の噴気孔は化けても消えないため、いつも帽子をかぶって隠しているという。音楽がうまく、祭りに現れて娘を誘い、身ごもらせて、朝には元のイルカに戻って川へ帰っていくという。
▼川の底の魔法の国
エンカンタードは人の姿に化けるだけでなく、嵐を起こしたり、人を操ったり、人をエンカンタードに変えたり、病や狂気、死をもたらしたりする力をもつと信じられている。
好きになった人や、自分との間に生まれた子ども、川の近くにいる人をさらっていくとも語られる。そのため、日暮れから夜明けまで、川に入ったり一人で水辺に行ったりするのを避ける人もいる。
▼祭りで踊るボト
パラー州サンタレンの村アウテル・ド・ションでは、17世紀にイエズス会が持ち込んだとされる祭り「サイレ」が受け継がれている。1997年から踊りの演目が加わり、1999年からは「ボト・トゥクシ」と「ボト・コル・デ・ローザ(桃色のボト)」の2組が、ボトの伝説を演じて優劣を競うようになった。
このサイレ祭は、2024年10月15日の連邦法でブラジルの国の文化として認められた。伝説の中のボトは、今もアマゾンの人々の暮らしと祭りの中に生きている。
正体をめぐる諸説
- 壱
民間伝承(事実として伝わる信仰)
アマゾン流域で広く語られる、イルカが人に化けるという伝承。実際に夜の水辺を避ける習慣にも表れている。
- 弐
イルカの体の特徴に由来する説
オスのボトの体の特徴が人に似ていることが、人に化ける伝説の元になったとする説。
