▼廃墟の町で
ラ・ノリアは、19世紀に硝石の採掘でにぎわい、いまは廃墟となった町である。2003年、ここでとがった頭と大きな目のくぼみをもつ、身長15センチほどの遺体が見つかった。
遺体は売られて人の手を渡り、スペインの実業家の所有となった。その奇妙な姿から、地球の外から来た生き物ではないかという噂が広まった。
▼科学者の調査
2013年、アメリカ・スタンフォード大学の研究者ギャリー・ノーランが、UFOのドキュメンタリー映画の制作にあわせて遺体を調べ、DNAから人間であると結論づけた。
2018年3月、ノーランらは学術誌『ゲノム・リサーチ』に全ゲノム解析の結果を発表した。アタはチリの先住民の血を引く人間の女の子の胎児で、骨の発達にかかわる七つの遺伝子に変異があり、それが異様な姿の原因になったと考えられた。遺体は古代のものではなく、1970年代後半ごろのものである可能性も指摘されている。
▼研究の倫理をめぐって
2018年9月には別の研究者たちが、骨の異常は胎児としては特別なものではないと反論した。さらに、亡くなった人の遺体を、遺族や地域の同意なく研究や見世物に使うことへの強い批判も起きた。
チリでは、遺体を国に戻して丁重に葬るべきだという声が上がり、研究者の側もそれを支持している。宇宙人の噂の陰には、生まれることのできなかった一人の子がいたのである。
正体をめぐる諸説
- 壱
人間の胎児説(定説)
全ゲノム解析から、骨の発達に変異をもつ人間の女の子の胎児だったとする結論。
- 弐
通常の胎児説
骨の異常はそもそも大きくなく、早く生まれた胎児の普通の姿だったとする反論。
- 参
宇宙人説
とがった頭や体の小ささは、地球外の生き物である証拠だとする説。解析の結果からは否定されている。
